第四章 資金調達

新たに事業を始めるには、資金が必要です。新しい製品やサービスをつくり出すためには、資金を調達して、工場を建てたり、人材を育成したりといった投資を行います。このような投資のために資金を調達するには、大きく分けてふたつの方法があります。債券を発行する方法と、株式を発行する方法です。

債券を発行することは、借金をすることに他なりません。債券とは、返済の予定や利息などの条件を明確にし、その権利を市場で取引できるよう規格化した借金のことです。債券を発行して資金を調達し、新たな設備投資をした場合には、貸借対照表の資産と負債が同時に大きくなります。収益を生み出す新たな設備は資産、将来返済(償還といいます)しなければならない債券は負債になります。これらはどちらも、今後の純資産の大きさを変化させる新たな要因となります。

新たな設備
既存の設備
現金
債券
借金
純資産
既存の設備
現金
借金
純資産


新たな設備のために、負債ではなく純資産を増やすのが、株式の発行です。負債を増やさずに資産が増えるのですから、その差額としての純資産は、新たな設備の金額分、つまり新たな株式の発行額分だけ増えることになります。企業では、純資産の所有権は株主にあります。以前からの株主に加えて、今回発行した株式を購入した株主が、保有する株数に応じて、新たに純資産の「部分的な」所有者になるわけです。

既存の設備
現金
借金
純資産
新たな設備
既存の設備
現金
借金
純資産


一方で、株式や債券に投資する側、投資家の貸借対照表では、前章で見たとおり、投資の実行によって現金の一部が株式や債券に変わることになります。貸借対照表の大きさは、投資そのものによっては変化しません。

マンション
現金
ローン
純資産
マンション
現金
株式や債券
ローン
純資産


このとき明らかに、世の中の貸借対照表の全体は大きくなっています。投資家が、現金の一部を株式や債券へと振り向けることで、調達する企業を通じて資金はリスクのある事業へと投下され、将来の収益の種苗となるのです。これこそが、経済成長の源です。

企業の純資産の所有権は、「株式」として分割され、市場で取引されますが、生み出される純資産の所有者である株主と、企業の経営者とが互いに分離されていることは、現代の資本主義社会の大きな特徴です。投資家は株式を保有することによって、「(労働者であり、かつ)資本家である」状態をつくり出すことができるのです。ここでは経営者は、純資産を生み出したことの対価として、報酬を受け取ります。

例題4-1) 貸借対照表の観点から、会社は誰のものか

例題4-2) 世の中全体の貸借対照表の観点から、会社は誰のものか

例題4-3) 個々の貸借対照表の主体が、利己的に行動した結果としての、世の中全体の貸借対照表を想起してみよ
posted by equilibrium at 2001-04-01 | [草稿]本文
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