例題4-1) 貸借対照表の観点から、会社は誰のものか

「会社は誰のものか」という問いは、実はあいまいです。それだけでは「会社」が何を指し示すのか、「誰のもの」とはどういうことか、はっきりしません。所有と経営を分離することが、株式を発行して資金調達する仕組みの背景にある理念ですが、貸借対照表の観点からは、「会社が生み出す純資産の所有権は株主にある」と考えることが出発点になりましょう。ここでは経営者や労働者は、純資産を生み出す対価として報酬を受け取る構造です。

実際の行動に注目すれば、物やサービスをつくり、そして売ることで、会社は利益を生み出します。消費者は自分がほしいものにお金を払いますから、会社の利益は常に「ほしいものをつくり出した」対価として発生し、当然のことながら、常に顧客と直接の関わりを持つものです。「つくり出す」ことに投資しているのは株主で、それに従事しているのが経営者や労働者、物やサービスを享受しているのが消費者という関係ですが、どのひとつが欠けても、そもそも生産が成立しないという事実は自明です。多くのビジネスは常に多くの関係者を持ち、地域や文化、社会と密接に関わらざるを得ません。その存在は、社会的なものとならざるを得ません。

自宅が自分のものだからといって、好き勝手な色や模様で塗ってよくない場合があるように、純資産が株主のものだからといって、常に周囲と関係している生産活動を、好き勝手に左右してよいものではありません。もちろん、情報の公開と関係各者の行動を通じて、多くのひとの思いは会社の活動に影響を与えます。労働者にやさしくない企業や反社会的な企業は、消費者に「あそこの商品は買いたくない」と思わせてしまうかもしれません。労働者は、よりよい環境を求めて転職してしまうかもしれませんし、投資家は「こんなビジネスに金を出したくない」と、株式を手放してしまうかもしれません。その意味で会社は構造的に、関係各者によって制御されています。
posted by equilibrium at 2002-04-01 | [草稿]例題
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。