例題6-3) 「個々のリスクにかかるプレミアム」と「リスク資産全体のプレミアム」は、どのような関係にあるか

リスク資産は数多くありますが、リスク・プレミアムの大きさは、それぞれすべて異なります。単位リスクあたりのプレミアムが大きな資産もあれば、相対的にプレミアムが小さな資産もあります。個々のリスクにかかるプレミアムの大きさは、何によって決まるのでしょうか。必ずしもリスクの大きさには比例しません。例えば、丁半博打には大きなリスクがありますが、リスク・プレミアムはありません。

あるリスクにかかるプレミアムの大きさを評価しようとしたとき、実はそれ単体では評価を完結させることはできず、他のリスクとの関係を考えざるを得ません。誰もにとって大切なのは「自分全体」ですから、個々のリスクは常に、少なくとも「自分全体」の観点から捉え直して考える必要があります。

自分全体のポートフォリオと組み合わせることによって、リスクが減じられるような投資は、必ずしもリスク・プレミアムが期待できなくとも、実行する理由になります。一方で、それが「追加的な」リスクになる場合には、一般にプレミアムが期待できなくては投資する気になりません。これから興そうとする事業が、誰もにとって「追加的な」リスクであるとき、その反対側では、資金を調達する側はプレミアムを用意せざるを得ません。

「自分全体」の平均像としての、リスク資産全体の「市場ポートフォリオ」は、「追加的な」リスクの大きさを左右する第一の要因になります。つまり個々のリスクは、そしてその単位リスクあたりのプレミアムは、そのリスクが市場ポートフォリオにどのくらい似ているか、という観点からその大部分を評価できるはずです。

個々のリスクにかかるプレミアム = リスク資産全体のプレミアム x 個々のリスクとリスク資産全体との相関

ほしいものをつくり出そうとする我々の活動の全体は、どうやっても打ち消すことのできないリスク、誰も避けることのできないリスクを内包しています。唯一のリスク・プレミアムはそこに存在し、他のすべてのリスクはそれとの関係で評価されるというのが、CAPM(Capital Asset Pricing Model)の考え方です。

同じことをつくり出す側から表現すれば、世の中の全体と似ていない、新しい産業をつくり出そうとするときには、投資家に支払うプレミアムは小さくて済むわけです。その産業は、自分自身を含めた新しい世の中の全体を、以前よりも安定的に成長させるでしょう。一方で「事業ポートフォリオ」などと称して多角化を広げ、見かけ上の安定を生み出したとしても、そこに独自性がなければ、投資家にとっては市場ポートフォリオ以上の価値を見出せないとも言えることになります。
posted by equilibrium at 2002-06-03 | [草稿]例題
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