例題10-1) 任意のポートフォリオを、3つのコンポーネントに分けてみよ

どんなポートフォリオでも、その背景にある意図を汲み取りつつ、大雑把に「3つのコンポーネント」に分けることができるはずです。是非あらゆるポートフォリオについて、挑戦してみて下さい。そもそも概念的な色彩の強い話ですから、3つのコンポーネントそれぞれについて細かく定義し、それらに沿って厳密に分解しようとすることは困難です。またそういった細かさは、あまり実際の役にも立ちません。負債の感覚や市場ポートフォリオの感覚、そして選別の感覚を身に付けることによって、世界観を新たにすることが、ここでの目的です。

実際の作業にあたっては、まず考える対象となるポートフォリオの主体について、はっきりとさせておくことが大切です。例えば自分全体や、どこかの会社全体というのは、比較的わかりやすい例でしょうし、それらを複数含む日本全体であるとか、そういった視点も面白いかもしれません。

ポートフォリオの中で、「将来の支払いを意識している」意図が感じられる投資行動は、すべて購買力を担保するコンポーネントに属すると考えます。例えば債券の保有のうちの一部は、金利の変動にかかる負債のリスクを相殺し交換している場合が多いでしょう。LDI(Liability-Driven Investing)と呼ばれるフレームワークは、このコンポーネントの重要性を強調した考え方です。以前は、ALM(Asset-Liability Management)とも呼ばれていました。近年になって取引手段は多様に発達しており、(貸借対照表には記載されない)リスク・プレミアムのみを交換するデリバティブ取引を活用することによって、こうした投資行動をさらに効率的に行うことが可能になり、購買力を担保する手段の主流となりつつあります。

また債券の保有には、リスク・プレミアムを期待するという観点もあるでしょう。しかしその場合には、市場ポートフォリオの一部として保有する状態が基本であるはずです。単位リスクあたりのプレミアムを最大にするのは、市場ポートフォリオだからです。とはいえ主観的な選別の見通しがある場合には、この限りではありません。負債を意識した成分が切り離された残りのポートフォリオから、市場の時価総額に観察される(狭義の)市場ポートフォリオを利用して、こんどは市場の成分(ベータ)を抜き出すことを試みます。残った部分は、選別を表現するコンポーネントと考えることができるでしょう。ポートフォリオ構築におけるBlack-Littermanのフレームワークとは、均衡ポートフォリオを出発点として、主観的な見通しによってアクティブに乖離させる投資行動を、ベイズ統計の言葉を用いて表現したものです。

仮に、購買力を担保する意図や主観的な見通しを表現する意図が明確であったとしても、それらが実際のポートフォリオの形で表現され投資行動に移されたとき、その意図に沿った結果が将来確実に実現される保証などありません。「意図しないリスク」はいつでも、あらゆる場所に隠れており、そのすべてを見つけ出し事前に消し去ることなど不可能です。だからといって悲観的になることはありません。この分解のプロセスにすら、意図しないリスクは隠れていますし、そもそもあらゆる活動に常にリスクがつきまとうのは当然のことです。それらと上手につき合うために、リスクを眺める視点を培うこと、そのための道具を手にすることこそが、ここでの果実なのです。
posted by equilibrium at 2002-10-01 | [草稿]例題
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。